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―数日前、物吉貞宗がドロップした。
期間限定イベントでの実装であった為、当本丸でも捜索は何度も行われていた。
1回目のイベントは間に合わず、2回目のイベントで手に入れられた事がよっぽど嬉しかったのだろう。
この本丸の審神者である『紫穂』は物吉をとても可愛がった。
そんな主を小夜左文字は、物吉を見つけてきたのは自分であった為、複雑な感情で見ていた。
「主様、これは何ですか?」と紫穂の読んでいる本の近くにあった栞を手に取った。
「これ?これは四葉のクローバーっていうのよ。」と教える主の言葉を復唱する物吉。
「クローバー…」「そう!普通は葉は3つなんだけど、極稀に4つ付いているものがあって、
それぞれの葉に『希望』、『信仰』、『愛情』、そして『幸福』の意味があるのよ。」と栞にされた4つの葉を1つずつ指さしながら教える。
「幸福のくろーばー…。」障子越しに聞いていた小夜は呟くと、唐突に庭に飛び出した。
あれからどの位の時間が過ぎたのだろう。小夜は四葉のクローバーを探していた。
しかし、いくら探しても見つからない。それらしきものがあっても葉が重なり合ってそう見えていたり、五つ葉だったりして、小夜の目は少し潤んでいた。
「小夜ちゃん?そこで何をしているの?」と背後から紫穂に声を掛けられ、肩が跳ねる。
「どうしたの?お腹痛い?」と小夜を心配する主に、
こんな情けない姿を見せた上に心配まで掛けてしまったと、ついに小夜の瞳からボロボロと透明な水滴が零れ落ちた。
「ええっ?小夜ちゃん大丈夫?」とオロオロする主に、「違う…。」とポツリと呟く。
「主は悪くっないっ、僕が勝手に、四葉のっ、くっ、くろーばーを探してた、だけ…」と続ける小夜に紫穂はハッと気付く。
「もしかして、さっきの話聞いていたの?」と尋ねると、小夜は力なく頷く。
「僕は、復讐しかっ、出来ない、から…。あなたに、少しでもっ、見て欲しく、てっ。」と零す小夜を紫穂はギュッと抱きしめた。
不幸な目にあった左文字の中で復讐に捕らわれたこの短刀の心を溶かすように力を込めて。
「貴方は決して不幸な刀じゃないわ。私の大切な家族なのよ。」もちろん貴方の兄弟や他の子達もね。
だからそんな悲しそうな顔をしないで―と頭を撫でる温かい手に、小夜は心の奥にあるわだかまりが溶けていくのを感じた。
「主―!そろそろお昼だよ―!」と今日の食事当番の燭台切光忠の声が聞こえた。
「さあ!小夜ちゃんもお昼ご飯食べに行きましょ!」と小夜の頬に付いた土を拭った紫穂の陽だまりのような手にソッと目を閉じた。
涙はいつの間にか止まっていた。
四葉の四枚目の印
2016/07/11